レジリエンスとは?折れた心の回復を早める力=レジリエンスを高める方法|賢恋研究所
失恋したときや仕事で失敗してしまったとき、落ち込んだ気持ちからなかなか立ち直ることができないことってありますよね。
今回は、そんな心が折れたり心の傷を負ったりしたときに役立つ「心の回復を早める力=レジリエンス」を鍛える方法をお教えします。
失恋してしまったとき、仕事でミスをしたときなど、落ち込んだ気持ちからなかなか立ち直れないことってありますよね。
一方で、切り替えがうまく、すぐに次に向けて動き出せる人がいるのも事実。
「気持ちを立て直せる人」と「落ち込みを引きずってしまう人」
その差はどこにあるのでしょうか?
今回は、落ち込んだり、心が折れたりしたときに役立つ「心の回復を支える力=レジリエンス」を鍛える方法をお教えします。
レジリエンスとは?
ひと言でまとめるなら、「折れかけた心を回復させる力」がレジリエンスです。
「レジリエンス」は元々「反発性」や「弾力性」を意味する物理で使われる専門用語でした。それが心の動きにも似た部分があることからポジティブ心理学の分野で注目され、失敗や困難を乗り越えていく力という意味で使われるようになったのです。
レジリエンスが低い人は、失敗した後、あるいはうまくいかない予感がし始めた段階で、気持ちが落ち込み、回復に長い時間がかかってしまいます。
逆にレジリエンスが高い人は、気持ちの切り替えがうまく、再チャレンジもすぐにできます。
そして、その再チャレンジがうまくいった場合、成功体験も重なるため、失敗そのものへの耐性がどんどん強くなっていくのです。
仕事でもプライベートでも、もちろん恋愛においても、あなたの心を支えてくれるレジリエンス。これは生まれ持った才能ではなく、経験を通して鍛えていくことができるのです。
続いて、ストレスや困難を乗り越えることも可能になるレジリエンスの鍛え方を解説していきます。
レジリエンスを高めるには?
失敗して落ち込んでいるとき、現状に困難を感じて苦しんでいるとき、「気合いで乗り越えろ」「根性を見せろ」「みんながんばっている」といったアドバイスをしてくる人がいます。
こうした根性論はレジリエンスと一切関係がありません。もし仮に根性でストレスを跳ね返せるなら、仕事や人間関係、恋愛で思い悩む人はほとんどいないはずです。
レジリエンスの研究で明らかになってきた、失敗や困難、ストレスへの正しい立ち向かい方は、たった1つです。それは問題を明確化すること。
耐え忍び、自己犠牲を払うのではなく、自分が今、何に苦しみ、どんな障害があり、デメリットを受けているのかをはっきりさせ、どう対処すればクリアできるのかを明確にしていきましょう。
すると、レジリエンスが鍛えられ、高まることがわかっています。
ポイントは、抱えている問題を自分の対処できるレベルまで細かく分解し、「これなら自分の力で解決できる!」と感じられるようにすること。
その結果、どこから手を付ければ解決に向かうのかが見えてくるので、立ち向かう心の準備が整うのです。
そこで、問題を明確化するための3つの方法と、いざ立ち向かうときにあなたのメンタルを支えてくる4つの習慣を紹介したいと思います。
レジリエンスを高める方法
レジリエンスを高める方法① 明確な人生の目的を掲げる
明確な目的を掲げると、レジリエンスが高まることがわかっています。実際、そのことが2016年のセントラルルーズベルト病院センターの研究でも判明しています。
生きがいを持つ人は死亡率が低い!
【研究内容】
2016年、セントラルルーズベルト病院センターが過去のレジリエンス研究から13万6000人のデータを7年間、追跡研究。
すると、67歳以上だった約2万人の参加者が7年の間に命を落とした。
研究チームはその死因を調べ、人生の目的、生きがいとの関係性をチェック。
【結果】
その結果、人生の目的や生きがいの感覚を強く持つ人は、そうじゃない人に比べて死亡率が1/5だったことが判明した。
研究チームは、人生の後半に差し掛かり、病気を抱えるなど悲観的な要素の多い時期でも、明確な目的、生きがいを持つ人は困難に立ち向かう方法を探り、適切な対処法を選ぶことができると分析。
人生の目的を持つことが、生きるモチベーションとなって、ストレスでダメージを受けた心を回復させるレジリエンスにつながっていくのです。
いきなり生きる目的を明確にするのは難しいですが、「どんな価値観を大事にしたいか?」「何をしているときに充実感を覚えるか?」など、あなたも生きがいになっている要素を探る「自己探査」という問いかけを自分に投げかけてみてください。
そこから、あなたなりの人生の目標が見えてくるはずです。
レジリエンスを高める方法② コンクリートトレーニング
「コンクリートトレーニング」は、「人生の明確な目標を掲げる」に比べ、恋人とケンカをして落ち込んでいるとき、仕事で失敗して立ち直れないと感じているときなど、身近な場面で役立つ方法です。
コンクリートトレーニングのやり方は、ケンカの最中の様子や仕事で失敗した経緯など、ネガティブな出来事の細部を意図的に思い出すというもの。
たとえば、恋人と口論になったとき、
相手の声のトーンはどう変化していったのか
あなたはどんな言葉を使ったのか
相手の表情はどう変わっていったのか
顔は赤くなっていたか
目線は自分のほうに向いていたのか、それとも向いていなかったのか
……など、できるだけ細かく思い出していきます。
もちろん、すべてを思い出すことは不可能ですが、努力することが重要です。
ネガティブな出来事の細部を回想しながら、「たしか、私の目を見ていた気がするな」「『うるさい!』と言ったら、後ろ向いて黙り込んでしまったな」など、可能な限り、リアルなシーンを思い出しましょう。
嫌なことを追体験するのはしんどく、より落ち込んでしまいそうですが、じつは明確に思い出すことで問題がはっきりし、レジリエンスが働くのです。
コンクリートトレーニングで気分が楽になる!
【実験内容】
エクスター大学の実験。60人の男女を集め、直近で起きた嫌な体験を思い出してもらい、全体をコンクリートトレーニングを行うグループと、何もしないグループに分けた。
【結果】
なにもしなかったグループに比べ、コンクリートトレーニングを行ったグループは40%も気分の低下が軽減された。
これはネガティブな出来事を細部まで思い描くことで、客観的な視点が生まれ、自分の心の動きを受け止めることができるからだと考えられています。
その結果、落ち込みが減り、回復の時間も短く済む。つまり、レジリエンスが高い状態になるのです。
レジリエンスを高める方法③ ポジティブ・プライオリティー
「ポジティブ・プライオリティー」は、あなたを幸福な気分にしてくれる物事、イベントを1日の行動の中心に組み込むことでレジリエンスを高める方法です。
多くの人は、仕事や家事、育児など、誰かのためにやらなければいけないことを優先してスケジュールを立ててしまいます。
ポジティブ・プライオリティーはそうではなく、あなたがやりたいこと、楽しみに感じていることを真っ先にスケジュールの中心に組み込み、その前後に仕事や家事、育児などを割り当てていくようなイメージです。
すると何が起きるかというと、日常のほとんどの場面で「もう少ししたら、あれを楽しめる」「挑戦のための自分だけの時間がくる」とワクワクした感情を抱くことができます。
それがストレスや落ち込んだ気分を遠ざけ、レジリエンスを高くしてくれるのです。
朝イチに趣味の時間を入れる
昼休みに次の旅のプランを妄想する
夜、仲間と食事に行く約束を入れる
スケジュール帳に仕事の予定を書き込む前に、楽しい時間を確保しましょう。
実際は書く順番が変わるだけかもしれませんが、自分のワクワクを優先させた感覚があなたを支えてくれます。
レジリエンスを高める簡単な4つの習慣
意識的に行動を変えていく3つの方法に加えて、次の4つの習慣を生活に取り入れるだけでもレジリエンスが高まっていくことがわかっています。
レジリエンスを高める簡単な習慣① 腹式呼吸
腹式呼吸をマスターすると、レジリエンスが高まるという面白い研究があります。
なぜなら、人間はゆっくり呼吸をしていると緊張することができないからです。ゆっくりとした呼吸は脳をリラックスさせ、物事に冷静に対処できるようになります。
【腹式呼吸のやり方】
片手を胸に置き、もう片方の手をお腹に置きます。
「ふー(吐く)、すー(吸う)」と胸が膨らまないようにゆっくり深く呼吸しましょう。
吸ったときに腹部が膨らみ、吐いたときに腹部が凹む。
こんなふうに、呼吸とともにお腹が動いていれば、腹式呼吸がうまくいっている証拠です。
いきなり習慣化させるのは難しいので、最初は1日に10分ほど、意識的に腹式呼吸をする時間を作りましょう。
レジリエンスを高める簡単な習慣② よく笑う
続いては、ストレスを遠ざけることで結果的にレジリエンスを高める習慣です。
ポイントはずばり、よく笑うこと。
ロマリンダ大学が行った実験では、お笑いの動画を20分見るだけで、ストレスホルモンであるコルチゾールの量が減少。記憶力と学習能力が向上することがわかっています。
しかも、笑ったことによるリラックス効果は45分程度持続するので、笑う時間を生活の中に組み込むことでメンタルが安定するようになるのです。
ちなみに、実際に声を出して笑わなくても、「この動画は面白そうだな」と期待するだけでも、ストレスホルモンが49%低下することがわかっています。
あなたが「おもしろい」と感じる動画を眺める習慣を取り入れていきましょう。
レジリエンスを高める簡単な習慣③ 運動
運動がメンタルに好影響を与えるのは、さまざまな研究で立証されています。
これはレジリエンスにも当てはまり、速歩きや筋トレ、階段の上り下りなど、ちょっとした空き時間に実践できる有酸素運動は不安感を低下させてくれる効果があります。
無理のない運動習慣を取り入ることで、心を回復させる力も伸ばしていきましょう。
レジリエンスを高める簡単な習慣④ 姿勢を正す
背筋を伸ばすだけでレジリエンスが高まるという研究があります。
背筋を伸ばすとレジリエンスが高まる!
【研究内容】
オークランド大学が74人の男女を集め、2つのグループに分けた。
・1つ目のグループ:前かがみ、猫背になる姿勢を取ってもらう
・2つ目のグループ:背筋を伸ばすように指示し、背中にテーピングを施した
その後、全員にストレスのかかる擬似的な職業面接を受けさせた。
【結果】
背筋を伸ばしながら面接を受けたグループは、面接中、情熱的に話し、力強い態度になり、説得力の高さを発揮。
一方、前かがみだったグループは心拍数が上がり、話す回数も少なくなり、神経質な状態で面接を終えた。
つまり、猫背ではレジリエンスがうまく発揮されず、プレッシャーやストレスに苛まれやすく、逆に背筋を伸ばしていると苦しい場面にも立ち向かえるようになったのです。
一見、根性論のようですが、こうした体の動きと心の動きの関係は「エンボディード・コグニション」と呼ばれ、心理学の世界では古くから研究されてきたもの。
苦しいなと感じたときは、背筋を伸ばてみてください。少しだけ、気分が変わるのを感じられるはずです。