幸せな退会者をいかに増やせるか/データアナリストが主導する組織とは<前編>
こんにちは、エニトグループ(with/Omiai)の採用担当です。
突然ですが皆様は「退会者を増やす施策」を打ったことはありますか?
当グループ(with/Omiai)は「退会者を増やす施策」に積極的に取り組んでいます。そして、その施策にはデータアナリストの存在が不可欠です。
なぜ、異例ともいえる「退会者を増やす施策」を打つのか、なぜデータアナリストが必要なのか、五十嵐(with CEO)と今井(Omiai COO)にインタビューしました。<前編>
■株式会社with 執行役員 CEO 五十嵐 昭人
クーポット(現グルーポン・ジャパン)を経て、2016年2月にイグニスに入社。当時、イグニスの子会社であったwithではデータアナリストとしてWeb/アプリサービスのグロースを担当し、事業責任者となる。withのイグニスからの独立後、2022年2月に代表取締役CBO、2023年3月に代表取締役CEOに就任。
■株式会社Omiai 執行役員 COO 今井 良樹
新卒としてリクルートに入社。システム開発、全社横断のネットマーケティングを担当後、リクルート住まいカンパニーの執行役員として、SUUMOを中心とした住宅領域のメディア価値向上に従事。2018年、リノベる株式会社に参画。マーケティング及び、バリューチェーン強化のためのITプロダクト部門を統括し、同社のDX化に貢献。2022年12月にOmiaiに入社、2023年3月に執行役員COOに就任。
事業・サービスの羅針盤
- まず、最初にエニトグループ(with/Omiai)におけるデータアナリストの役割を教えてください。
五十嵐:
シンプルに言うと事業やサービスの様々な「なぜ?」に対して方針を示す羅針盤の役割だと思っています。その対象が「①経営データ、②サービスのデータ、③マーケティング関連データ」などに分類できますね。あともう一つ、ユーザーのプロフィールや行動データを基に④マッチングロジックを設計しているのですが、それらを主導する役割も担当しています。
さらに、これらを分析するだけでなくデータ活用方法の提案をする、という要素が必要になってきます。
人事:
かなり深くそして幅広くデータを取り扱うのですね。「分析する役割」だと思ってましたが、理解が浅かった・・・。興味深い話なので更に知りたくなってしまいます。
破棄するデータ、それは宝の山
- データはどのように深く掘り下げるのですか?
五十嵐:
ユーザーの細かい行動から着想を得るという視点にはこだわってます。そうすると必然的にデータを掘り下げて考えるようになります。
また、当社に価値観(ヒトの性格、恋愛や結婚についての考え方)に関するデータがあるので、それらを行動データとかけ合わせることにより、希少性の高いデータに変換できます。(複雑性も高まりますが・・・笑)
このように、当社には一般的には破棄してしまうモノを新しく活用できるデータに変換する思想があります。データアナリストを生業にする方々でも目にしたことのないワクワクするデータの宝が日々生まれていますよ。
それらのデータの活用でプロダクトやマーケティングが進化するため、データアナリスト冥利に尽きると感じられる場面が多くあります。
安心・安全な環境作りにもデータは必須
- こんな意外な場面でもデータを活用している!?という事例を教えてください。
五十嵐:
データは「ユーザー体験の最大化」を図るために活用するのはもちろんのこと、「安心・安全な環境作りや治安維持」のためにもフル活用しています。
例えば、悪質ユーザーの判定において、彼らがどんな行動でどんな発言をするのか、などの傾向をデータで捉え、レギュレーションに基づいて対処もします。また、機械学習を取り入れて、より効率的に悪質ユーザーを特定できる仕掛けづくりも主導しています。
「意思決定の確からしさ」へのこだわり
- エニトグループ(with/Omiai)がデータを重視している背景は?
五十嵐:
アプリの開発や運営をするにあたって「意思決定の確からしさ」を大事にしている、という背景があります。小さい組織で良い結果を生むためにはそれなりの工夫が必要でした。その中でも主に2つの視点を説明させてもらいますね。
1つ目は企画開発の視点です。
手当たり次第でトライ・アンド・エラーを繰り返す方法だと無駄な開発や検証が増えてしまい、良い結果にたどり着くまでに沢山の時間がかかっちゃいますよね。その時に僕らはデータに基づいた仮説立てに力を入れることにしたんですよ。また、データは職位や職種に縛られず、みんなにとって共通言語になるので、意思統一をはかるにもとても有効でした。サービスリリースをした当初はマッチングアプリへの知見や経験があるメンバーが1人もいなかったこともあって、成功事例や失敗事例の情報も不足、というか皆無だった。。皆がマッチングアプリに対して無知である場合、何をよりどころに企画開発するのか、それはデータであった、ということです。
データに基づいたユーザー体験の設計
2つ目はユーザーに提供するサービスという視点です。
いかに「最短で良いユーザー体験を届けられるか」を考えた際、仮説レベルが高ければユーザーの期待に応えられるまでのタイムラインを短くできると考えました。今も組織規模は大きくないこともあり、データに基づいてユーザーのサービス体験を設計するという文化は変わっていません。
人事:
そこからデータドリブンな文化形成がはじまったのですね。かなり納得感があります。
想い・ワクワク感でチャレンジする
五十嵐:
他にもこの組織の面白いところはありますよ。それは定量データに頼らない場面もあるってところです。未知なことに対するチャレンジには遊びがある組織というか(笑)。
データはあくまでも過去の蓄積です。未来や未知なものに対しては想い・ワクワク感でチャレンジする企画や仕様もあったりしますよ。例えば、withではユーザー間のメッセージ機能で相手に「花火」という文字が含まれたメッセージを打つと画面に花火が打ち上がる演出を期間限定のキャンペーン企画として取り入れたことがありました。これは定量データに基づいていなく、ユーザーのワクワク感をどうやって高められるかを皆で話し合い決めた仕様です。ここで「意思決定の確からしさ」を担保するため、心理学の有識者との連携や自分たちで勉強したことがそのエビデンスとなったともいえます。必ず専門性の高さを担保して物事を決める、そこはこだわってます。
【キャンペーン告知ページ・メッセージページ】
立場を越え、意見し合える文化
エニトグループのVision、Mission、Value(以下、VMV)でも表現しているようにサイエンスと人の温もりが感じられる、人に寄り添ったサービス設計がエニトグループの特徴ですね。
人事:そうだったのですね。今、感じたことなのですが、「企画開発メンバーが職位や職種をまたいで意見を出し合える文化」があるのはこの文脈が関係していますか?
五十嵐:
まさにその通りですね。企画や仕様を議論する際、テーブルに乗せる内容は各職種の専門分野で議論するのでなく、関係者にとって誰もが同じ基準で議論ができるようにし、それを何度も繰り返すことで今のVMVである「サイエンス(データ)」「人の温もり(ワクワク感)」という言葉に反映されていったのかなと。これは狙ったというよりは副次的効果の側面もありますけどね(笑)。
データをクロスさせ、新たな意味を見い出す
- Omiaiのデータアナリストはどのような考えのもとで業務をおこなっているのかを教えてください。
今井:
「取得可能なデータの増加」「データ同士をクロスさせ新しい解釈を生む」ということを日々行っています。過去、私達が確認してきたデータはある事象を単一で理解するということでした。(例:アクティブ率が●%から●%に上昇した、など)
今、Omiaiはその一段先である複数のデータ要素から新たな意味合いを見い出すフェーズに差しかかっているといえます。人の思考や行動データから様々な解釈(人はどんな心理状況の時にどんな行動をとることになるのか、など)ができます。その新しい解釈をサービスのどんな機能に反映するのかを考え抜くことが大事になってきています。実際にデータの解釈を議論するミーティングは、サービスを越えてwithの五十嵐さんにも参加いただいて意見交換をしています。
プロダクト成長の主体者
- 課題抽出、データ分析、企画立案などPdMとの役割分担はどのようになっていますか?
今井:
データ軸でテーマ性をもった分析はデータアナリスト、仕様やイベント企画へ密接に関連する案件はPdMが分析したりと大枠での役割分担はあるものの、きっちりとした線引きで運営しているわけではありません。それはデータアナリストとPdMが双方から歩み寄り、目的に対して必要な関わり方をしてほしいからです。
重要なのはユーザーの本質的なニーズを汲み取り仕様に反映できるかという点です。その最大値を出すための枠組み(役割分担)は、自由度高く双方から歩み寄りながら協業するがよいですね。
あと、もう一つ大事なのは企画主体者であってほしいということです。それは自分主導のプロジェクトとしてゴールまでの推進役を担うということです。分析だけでなく、結果を出すための推進役も担い、プロダクト成長の主体者となってほしいと思ってます。実態としてデータアナリストが主導するプロジェクトは複数あります。最たる例として、withの五十嵐さんはデータアナリストからスタートし、その後はプロダクト全体の責任者になり、今はwith社の代表を務められていますよね。五十嵐さんがたどってきたキャリアは自分の担当範囲を限定せずプロダクトの成長にコミットしてきた軌跡だと思ってます。